「高齢者による高齢者のための福祉社会をめざして」

 

高福協(日本高齢・退職者福祉推進協会)とは、高齢者による高齢者のための具体的な「支援活動団体」です。 ひとりひとりが社会の担い手として、生活の場から自ら発言し、行動を起こしていくことで真の福祉社会の創造を目指します。

 

 
 

 

●設立にあたって:発起人代表(初代理事長) 橋口 和子 (故人)

 この度、私たち高齢者問題に関心を持つ有志の者(後記)を発起人とし、高齢者による高齢者のための高齢化社会の創造を目的として『日本高齢・退職者福祉推進協会』を設立致しました。

  私はこの半世紀の間、労働組合活動や政党活動を通じて、賃金、年金、医療など社会保障制度の充実のために努めてまいりました。
  また、発起人のある者は長年民間企業の第一線で活躍し、日本経済の高度成長を築き上げ、そして支え続けてきました。

 しかし、戦後の全てを一変させた右肩上がりの高度経済成長とそれを支えてきた『五十五年体制』と呼ばれる政治構造はバブル経済とともに崩壊し、政党政治も労働組合もそして日本経済そのものも今まさに崩れつつあるといっても過言ではありません。

  二十一世紀と共に日本は世界でも例を見ない速度で高齢社会に突入しました。

  政府は経済政策の失政処理を構造改革の中に『総国民一律応分負担の原則』という大義に盛り込み、その実行に向けた議論と法律改正に移行しているのは周知の通りです。結果的には社会保障費の削減という『弱者切り捨て』つまり『私たち高齢者への最後通告』とも判断できます。
  今こそ『先人や先達の志を再確認』し、生を享受する私たち高齢者自身が世界の見本となる高齢化社会を創造し、それを『次代に継承する責務を負うべき』と思いました。

  そして私たち国民一人一人が個人の尊厳を確立し、過去のイデオロギーや職域、肩書き、立場を越え、二十一世紀のより良い社会創造のため、当協会設立がその実現の第一歩になることを願っております。

 

■個人の自主的な行動が求められる時代  


  二十世紀後半までさかんに『地方分権』や『地方の時代』と叫ばれてきましたが、具体的な検討や議論もなく、ただ、いたずらに日々は過ぎてきました。 二十一世紀になり、ぼんやりとその主旨や意味が表面化してきましたが、同時に問題は深刻化してしまいました。

  政府は行政改革の一環として、『各自治体への大幅な権限の委譲』、『国営・特殊法人の民営化』などを明確に打ち出しました。
  これを聞くとソ連邦崩壊後、幾度となく各テレビで放映された『年金も食料も尽きた・ある老人』の生々しいドキュメンタリーが、私たちの将来を暗示してるかのように連想されるのは考えすぎで過激なお話しでしょうか?
  現実の社会で生活する私たち高齢者は、自分たちの問題として一日も早く『慣れすぎた旧体制』から目覚めなければと、私は日々不安を感じます。
従来のタテ社会だけに頼るのではなく、当然のごとく一人一人がお互いに助け合うことのできる地域協同体を私たち高齢者が創り上げなくてはなりません。

  今まで様々な団体や組織、企業などに所属されてきた、また現在もされている方々にとっては、個人としての身の処し方に大変迷われる事と思います。
  あくまでも個人としての皆様が自主的に参加することによってこそ、当協会の目的の成否がかかっていることをご理解頂き、絶大なるご協力とご尽力を賜りたくお願い申し上げます。

 

■高齢者による高齢者の真の福祉社会を  

 

  たとえば介護保険制度を例にみますと、地域住民のための活動母体がないままに厚生労働省は利益追求に走る企業や、名前だけの社会福祉法人に依拠して政策を推し進め、多くの地方行政もその具体策に苦慮し、高齢者は大変な苦況下にあります。

  今こそ、私たち高齢者が自主的な創造の下に、『現実的な福祉社会』を実現させるため、もう一度原点から見直す必要があると思います。
その為には全国の市町村各地域にその核となるべく、新たなる芽としての皆様のお力が必要であると痛感致します。

  その新たなる芽を育み、花を咲かせる有志の連帯を各地で展開しながら、将来は世代を越えた市民ネットワークが現実のものになるという、壮大なる夢をご一緒に描きたいと存じます。

  高齢者にとって、生きがいを肌で感じられる真の福祉社会の実現を目指して、後記の各部会を提案させて頂きました。
これらの部会は実際の会議だけでなく最新の情報通信機器(テレビ会議等)を使ってどなたでも自宅から参加できるようにしていきたいと考えております。
もちろん情報機器は全くの初心者、高齢者も簡単に利用できます。これらを利用することで一人一人の声を真の意味で形にしていくことが可能になると考えております。

  すでに私たちも交流を持っているアメリカの全米退職者協会では、三千五百万人の退職者による自主的・創造的な活動が展開されていることはあまりにも有名です。

 

■私達にこそ必要な通信技術を  

 

  ここ数年、テレビや新聞などで「インターネット」、「IT(情報技術)革命」といった言葉をよく耳にしますが、私たちの世代では「いまいちわからない」とか「必要を感じない」とか「やってみたいがどこから手をつければ・・・」という方が多いのではないでしょうか?
  確かにインターネットをやらなくても生活はできます。しかしインターネットを始めることによってその生活がより豊かになることも事実です。そういう私も最近始めたばかりですが・・・。

囲碁、将棋、麻雀などのゲームを家にいながら遠くの友人と楽しめたり、
短歌や俳句の発表会や批評会に参加できたり、
自分好みの温泉旅行を家にいながら計画できたり、
産地直送のお米や野菜を家まで届けてもらえたり、
お孫さんや旧友と写真つきの手紙(電子メール)を無料でやり取りできたり、
家にいながら銀行の振込が行えたり
ご自分の考えや活動を世界中に発信し、仲間を集めたり
と様々なことが考えられます。

  私が気付いたインターネットというものは自分の趣味や活動をより充実させ、人とのふれあいの機会を多くし、大切な時間を有意義に活用するための手段であるということです。まさに私たち中・高齢者のためにあるのではないでしょうか。



  インターネットを利用するための機器は、大変使い易く進化し、銀行や郵便局のATM(現金自動預金払出機)と全く同じように、手書き感覚で使うことができます。一日もあればどなたでも使いこなせるようになるでしょう。

 

 高福協ではインターネットなどを使い、市民オンブズマンとして世直し提言、草の根運動や署名運動、世論調査という全国規模の展開に発展させていきたいと思います。

 

 

●プロフィール はしぐち かずこ
1926年4月、朝鮮仁川府生まれ。45年終戦で引き揚げ、鹿児島県で小・中学校教師として教職に就く。51年鹿児島県教組執行委員、53年神戸市で中学校に勤務(社会科・体育)、57年神戸市教組専従執行委員、62年日教組本部婦人部・教文部・生活局などを経て財政局長を歴任。80年女性初の日教組副委員長に就任、88年退任。94年退職婦人教職員全国連絡協議会会長、02年辞任。同年4月特定非営利活動法人日本高齢・退職者福祉推進協会理事長に就任。